236年カタカタ

また、鏡から腕が出ている。
黄色人種の細身の男性の腕でした。
うっすら腕に毛が生えているのが見える。
手鏡のような小さな鏡。
腕の隙間からわずかに、鏡面が見えるだけ。
他の鏡からは手が出ていない。
冷静に書くと不気味だなー。
この腕が、私を呼ぶようにぶんぶん手を振っている。
呼ばれたので、握手したら、中にいた。
 
パステルカラーの太い縞々柄のワンピース、同じ生地のターバンのような帽子。
目の前は草原で、奥に山が見える。
私は、黒人だった。
手足が棒のように細く、褐色というより真っ黒だった。
足の甲が殆ど出るような親指でとめている、というサンダル。
名前は、カタカタとか、カラカラとかいう名前。
236年という。
 
10歳ぐらいの場面になった。
私は裸で、四肢を押さえつけられていた。
いやだいやだと泣いている。
押さえつけているのは、私の家族や親戚の女性たちのようだった。
年配の女たちで、でも、母親はいたかどうかわからない。
割礼の場面のようだった。
終わると、私は木のベッドに横になっていた。
猛烈に痛い。
自分の右腕を枕にして、だらだら流れる涙を抑えずに横になっていた。
生まれたままの自分であることがいけないことなんて、どういうことなんだろう、と思った。
「生きていることに意味なんてないんだ」
と思った。無意味だ、と。
私にはこのころ既に、もう結婚相手が決まっていたようだった。
同時期かどうか分からなかったが、
私が両手を差し出しており、女性たちに手の甲全面に白い塗料を塗られていた。
結婚式の準備場面のようだった。
「良い相手らしいが、同じことだ」
と思っていた。
 
ウサギのような小動物が足元にいる。
私は立っている。
ねずみかも知れない。
それが、血を流して死んでいる。
私が殺したようだった。
いけないことをした、という思いがあった。
割礼より前の出来事で、こうしたことをしたというのが割礼の原因か、と思ったりしていた。
 
小さな子供のころの場面になった。
6歳ぐらいのころだろうか。
弟らしき、2,3歳児もいた。
皆できゃあきゃあ言っていた。
凄く楽しそうだった。
 
もっと小さいころの場面になった。
2,3歳といったところか。
髭だけ白い祖父に、ひょいっと抱っこされた。
祖父は、私を抱いているだけでにこにことして幸せそうだ。
私が祖父を幸せにしているのかな、という漠然とした感覚があり、
幸せだった。私も笑った。