サルの続き

紀元前220年サル・ゾルジャ - フジログ
の、続きです。
てか、サルって名前、どうなの。
 
なんか、問題の箇所はスルーしてしまった気がするんだよなぁ、
と思い、自宅の台所兼食堂でぼんやりしていると
突然、場面が浮かんだ。
 
私は、子供をひざ抱っこしたまま。
その子を抱っこしたまま、崖のほうへ。
友人は、タッカとか、タッシャとか、そんな感じの名前の男だ。
側に、きれいな女性がいる。
彼の奥さんのようだ。
彼女と目が合い、なんとなく自分が赤くなっている気がする。
子供を必要以上にあやしてしまう。
この子は、自分の子ではなく友人の子だと気付いた。
彼女の目は、私と友人の間を行ったりきたりしている。
「彼を止めてくれ」という意思表示なのだろう。
友人は、あまりにも嬉しそうで、何を言ってももう、止めないことは分かっていた。
 
「お前、死んだら彼女たちはどうするんだよ」
というと、友人は明るい声で笑いながら
「お前がいるから大丈夫だよ」
という。彼は私の思いを分かっているのだろう。
「それに、やっと飛べるんだ。神様だって、これが正しいことなら絶対上手くやらせてくれる」
確信に満ちた顔をしていた。私は、彼の望みなら、友人だからとグライダー作りを手伝った。
グライダーには鳥の羽を縫いつけてあった。
 
「じゃあ、」
と言って、
彼は自分自身を小さなごみのようにポイと崖の下へ投げ入れた。
私は、もう分かっていた。
彼は死ぬだろう。
でも、死なないで欲しい。
死なないで欲しい。
崖の下に、蛇行する青い水の川が見える。
滑空する間もなく、彼の翼はおそらく腕ごと、ぽきりと折れた。
私は、彼の名前を読んだ。
自分の血液が、
大地にするりと全部抜かれたような寒気がした。
私に抱かれた子供が、私の恐れを感じて、私の腕を強く掴んだ。
抱いたままでいたことで、私の感情を察し恐ろしい思いをしただろう、
子供に申し訳ないという思いが浮かぶ。
川原に落ちた、彼は動かない。小さな小枝のようだ。
あの崖下の川まで、下るまでどんなに急いでも3時間はかかるだろう。
ああ、
ああ、駄目だ、私はもう、駄目だ。
 
川原で、彼が顔を右にして、うつ伏せで亡くなっているのを私が見つけた。
もう、私の人生も終わってしまった、と感じた。
 
トモスに会ったのは、この出来事の後のようだった。