紀元前650年テイジョ

いや〜、超久しぶり!この項目。
最近は意識して、前世を見ないでおいたのでした。
「今生きている」ことをちゃんとやろうと思ってね・・・。
でもまあ、足かせになってるものがあるなら外してしまおうと。
どうやらあるらしい感じだったので、外してしまおうと。
そう思って訊いた例のCD(ワイス博士の前世療法 (瞑想CDブック))でした。
 
初めから、前世を観よう、と思って挑んだのは久しぶり。
あのCD、聞いたことがある人は分かると思うんですが、
たくさんの鏡の中からひとつ選ぶ、というところがあるんですね。
その中から選んだひとつの前世を見ることになるわけなんですけど。
今回は、笹の葉の形のような、縦に細い鏡にした。目の形を縦にしたような。
宝石のカットだとマーキースカットとか、舟形とか言われる、アレ。
ほかの鏡もちょっと見たんだけど、なんかまだまだたくさん知らないものが映ってたなぁ・・・。
うぎょ〜、とちょっとげんなり。
いや、前世はあって良いんですけどね。
もっと観た方が良いと言われたような気分。
 
で、その舟形の鏡に近づくと、
腕、一本出てる。
うーん、中性的な腕ですね。右腕ですね。
なんだ、このバージョンは。初めてよ。
 
うーむ。
とりあえず、掴んでみました。
引き込まれました。
 
 
気がつくと、コケた後みたいな姿勢。
orz
というそのものの姿勢。
「テイジョ様!」
と呼びかけられる。
自分が、刺繍の入った真紅の生地に桃色のつやのある縁取りの服を着ている。
テイジョ?貞女??位の名前か、あだ名か、本名か分からない。
周りは螺鈿細工の入った家具やら、緻密な織物やら、豪華な装飾。
私は、その社会の中では成人しているようだがかなり小柄なほうだ。
そして、足は纏足。
こけたのは纏足のせいだったようだ。
すると、男性が現れて私を子供のように抱きかかえた。
夫か、結婚する相手かもしれない。
きっと好きだったのだろう、嬉しいという思いがどっと押し寄せる。
「私が、広間までお連れしましょう」
食事に行く途中だったようだ。
私は、返事を声に出せていたのだろうか。
顔は真っ赤だっただろう。
紀元前650年頃という。
場所は、ユーラシア大陸。今の中国だ。
 
私は老いている。
髪は真っ白だ。
その髪を結い上げて、豪奢な椅子に座っている。
誰か男性と話をしている。
自分より若いか、自分と同じぐらいか。
60〜70歳ぐらいだろうか。
私は姿勢を正して、厳しい目をして座っている。
相手の男性に、からかうんじゃありませんよ、みたいなことを言っている。
男性の方は、面白そうに笑っている。ひげもじゃらだ。
達磨みたいな体型をしている男だ。
お互い、地位が高いようだった。
私は年をとって、どこか捻くれてしまった人、という感じになっていた。
博識で、正しくて、厳しくて、面白くない人という感じ。
 
また、初めの若いころの場面に戻っている。
おそらく、今で言ったら私は身長150cm未満といったところだろうか。
腕も足も細くて、子供のようだが、その時代には好まれた容姿だったらしい。
夜で、私はトイレに行こうと外に出たらしい。
何かの気配に気がついて目をやると、自分を抱き上げた男性が軒下にいるのに気づいた。
しかし、その前に女性が立っている。
自分の護衛をしている女性だった。
「私は、強い女性が好きなんだ」
と、その女性にはっきりと、懸命に好意をしめしている。
女性のほうは、「私のような足の大きな女のどこが良いのですか」と返している。
この時代には、纏足をしていて、体の小さいか弱い女性が好まれたようだ。
纏足をしていない女性というのは、この時代には田舎者の地位の低い女性を示すものだ。
二人とも、既にお互いに好意を持っているのは闇の中で声を聞くだけでも分かった。
男性の方が「そんなあなただから、いいのだ」ときっぱりと言った。
二人の地位は王と使用人のようにかけ離れているのを、私は知っている。
護衛の女性は、信頼の置ける誠実な人柄で、はっきりした面立ちの背の高い美人である。
男性は所謂武人で、彼女に惹かれる思いも分かる。
私は、悲しくなって部屋に帰ろうときびすを返した。
しかし、纏足のせいでバランスを崩して、転んでしまった。
纏足の靴は、その足の中央にヒールがある不思議な形をしていて、非常に歩きにくい。
「一人で、厠へいくこともできない」
と情けなくなり、涙が出た。
 
その護衛の女性は、男性の妾になったのか、正式な妻になったのか分からないが、
後宮のようなところに上がることになった。
嫉妬心もあったが、そんなもの、あったところであの男性の心はこの人のものだ、という諦めがあった。
さまざまな決まりごとがある高位の女性の世界に大人になってから入ることになって、
大変な苦労をすることになるのだろうな、とぼんやり思った。
けれど、自分に対してこの人でなければ、という愛する人のために苦労するならば
その甲斐もあるだろう。
私などよりは、ずっといい。
 
 
私は細かな彫り物のされたこげ茶色の木の椅子にもたれている。
目が死んでいる。
「生きている意味が分からない」
というようなことを侍女に言っている。
目は、軒先にぶら下げてある木製の鳥かごに向いている。
「私である必要がどこにあるというのか」
というと、侍女が「そんなことはありません」と、返してはくれる。
「そうは言うけれど、私が私であることを求められたことは一度もないのよ。
戦に勝った人々が欲しいのは、分かりやすい特徴の私をそばにおいておくことだけ。
私のいた国に勝ち、私の親に勝ち、私を蹂躙する権利を得て置いておけるということが欲しいのよ。
私を閨に迎えて、私と私のいた国を所有したことを喜ぶ。
祝いの席に私をはべらせて、敗国の花を自慢できることが嬉しい。
子供ができれば、かつての大国の血を服従させ、且つその権威を受けたものを継がせることが嬉しい。
私自身であることを求められたことも求められることもない。
だからといって、所有されることから離れて、生きる力も私にはない。
あなただって、私ではない他の人のところで仕事をした方が、幸せな人生でしょう」
侍女が、団扇で風を送ってくれている。 
私はあのいつか私を抱き上げた男性とは違う人のところに今は居るらしい。
どうやら、自分の母国は戦いに負けて、戦利品として連れて来られたようだ。
あの私が好きだった男性は、どうなったのだろう。
殺されただろう、きっと。
そんなことを考えていた。
「テイジョ様は、私をあのかごの鳥のように考えているのではありませんか?」
と侍女が突然言った。
顔を向けると、意志の強い目で私を見据えた。
「テイジョ様があのかごの鳥を気まぐれに放逐されたら、あの鳥は飢え、死ぬでしょう。
私は放逐されたら、死ぬでしょうか。いいえ、死なないでしょう。
テイジョ様のお側に居ることを選んでいるのです。
お国がなくなった時、私は逃げられたでしょう。
逃げたほうが、自由だったでしょうか。いいえ、違うでしょう。
お側に居るほうが、いい暮らしができる、今はそうです。
ともかく、私はテイジョ様だからお側に居るのです」
よく、理解できなかったが、よく言ったものだな、と思った。
本当に私が放逐するかもしれないからだ。
強い女だな、と思った。
しかし、私とは関係がない。
この無力感、無価値感はどうだ、と私はまた外を観た。
この感覚は、一生付き纏ったようだ。