盲目の女性

随分前に見て、ロシア系のような発音の難しい名前だったので忘れてしまったが
記録に書いておく。
 
私は、ウェーブがかった長い髪をしていて、靴は踵のないパンプス、少し靴紐が付いていた。
ワンピースを着ていて、丘の上らしいところに立っている。
前から来る風が気持ちが良い。
左手で、木の幹に触れている。この手触りは、杉だろうか。
自分の髪はダークブラウンであるという認識がある。
丘の上に立っているはずだが、その下に街並が見えるはずだが、見えない。
雲がかかっているか、もやがかかっているように周りが見えないのだ。
しかし、それが普通であると言う認識があり、不安も不満もない。
触っているものに対しては、形、感触、色を感じられる。
 
ふとすると、後ろから私を抱きしめる腕がやってきた。
男性の手が、腰に回される。
その腕だけで、それが恋人のものだとすぐに分かる。
その腕に対して体をまわして、その恋人の首に両腕をまわし、抱きついた。
「そんなに無防備では、危ないね」
と言うようなことを、優しい、しかし少し嬉しそうな声で言われた。
しかし、恋人の顔が分からない。
鼻が高いということはわかるが、瞳がないという印象だ。
ここで私は、ああ、このときの私は目が見えないのだな、と分かった。
 
初対面で妙に安心感があり、一生傍に座っているだけで良いなぁ、
と思うほどに雰囲気が心地よい方がいたので、いたずら心で前世退行瞑想をしてみた結果でした。
その人が、その恋人でした。