1740年キャシャ・ブラウン

気が付くと、沢山の藁の上に横になっていた。
茶色いブーツを履いて、下着の白いワンピースだけで転がっている。
私は5,6歳だろう。
自分のオリーブ色の髪が見える。
名前を聞くと、キャシャ、という。
年代を聞くと1740年という。
と、目の前に仁王立ちの女性が現れた。
「こんなとこでなにしてんの!そんなかっこうで!」
怒られた。
ああ、お母さんだな、と思った。
「おかあさん、ここどこ?」
と聞くと、同じ調子のまま、
「何言ってんの、あんたはキャシャ・ブラウンで、ここはあんたの村よ!
トートを連れて学校行きなさいっ!」
と追い立てられた。
フランスの田舎かなあ、と思った。
私は藁の貯蔵庫のようなところに居たようだ。
居間に行くと、3歳ぐらいの弟がテーブルに着いて、スプーンを右手に持ち、
「キャシャぁ〜」
と言っていた。
この弟がトートだろう。
彼をみて、「ああ、この人知り合いの○さんだ。弟だったのか〜」と思った。
私はくすんだオレンジ色のワンピースを被るようにして着て、
トートを連れて学校に行った。
教会が学校と兼用になっていた。
弟を連れて行ったのは、子供がいると親が家で仕事が出来ないかららしい。
他にも、幼い弟妹を連れてきている子がいたようだった。
 
私は大人になっていた。
トートも成人していた。
農地が、遠く地平線を見せている。
左側に柵があり、その向こうが少し高い丘で、上に赤い屋根の家が見えた。
刈り残された黄土色の藁の根元が、ずっと広がっていて綺麗だ。
視界の右奥に、大きな木が数本と教会が見える。
二人は、荷馬車に藁を押し込んでいた。
私は髪を纏め上げて、スカートをはいており
トートはズボンをサスバンドのようなもので止めていた。
彼はどこか遠いところに行きたいんだ、と言う話をしていた。
私は教会で教師の仕事をしているようだった。
「キャシャみたいに、同じところにずっといるのは嫌なんだ」
とトートは言ったが、私は「子供たちは、可愛いものよ」と言っていた。
あまり大きくない黒板を前に、子供たちに教えている姿が浮かんだ。
「静かにしなさい!」と叱ったりしている姿もあった。
怖いけど、嫌いじゃないと子供たちには思われていたようだ。
教師の仕事を誇りに思っていた。
トートがいつか帰ってきたら、子供たちに話をして欲しいな、と思っていた。
 
場面が変わり、麦藁帽子の男性が、私に挨拶した。
帽子を脱いで、「やあ、また会ったね」と言われた。
とてもいい笑顔だった。
私は彼とは初対面だった。
不思議なことを言う人だわ、と思った。
その人は教会の新しい牧師で、デイビッドという名前だった。
茶色っぽい金髪の男性だった。
私は、しばらくして彼と結婚したらしい。
子供も3人ぐらい居たようだ。
最後に、1810年、という年代が浮かんだ。
その年に死んだのかもしれない。
 
キャシャというのは愛称かもしれない。
キャサリンとかキャシーとか、そういう名前だったのかなと思った。
名前からして、フランスではなくイギリスかも。