科学者になるということ

科学者とは、そんな人間なのです。よく、科学者と芸術家は対比され、両者はよく似ているといわれますが、その理由の1つがここにあります。そして、自分で自分を評価するためには、自分と向き合うことができなければならないのです。自信をなくしている自分、実験を何度行っても再現性が取れずに混沌とした結果を前に途方にくれいている自分、自分は研究に向いているのだろうかと不安になっている自分。そんな自分とも向き合わなければならないのです。そこで登場するのが、自分を客観視する力です。いわゆる「能天気」とは意味が違います。今の自分の状況を第三者として把握し、「きっと良いことがある」と信じる気持ちがあれば、「こういう状況であれば、誰だって暗い気持ちになってしまうのは当然。また、振り出しに戻って研究してみよう」というふうに考えられることができるのです。
 
森 郁恵, 研究者になるということ, 生物科学(2008)第60巻 第1号 51-52

いずれ後輩に対し、こういったことを確信をもって伝えられる先輩になりたい。
いや、なろう。