Touch the sound

Touch the Sound [DVD] [Import]

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 この映画は、強く私の扉を叩いた。
 さあ、開け、お前の扉を!
 まだ開く扉があるのだ、まだ、受け取るべきものがあるのだ!と。
 
もう一度は見なくてはならない。
あのスネアドラム。
開け、開け、開け、
その声が聞こえる。
 
この映画を見て、私は、自分の中にある幼少期の抑圧にまた気がついた。
主人公のエヴリンは、聴覚に障害がある。
それがはっきりとわかったときの話が、私の扉を少し開けた。
 
子供のころの私は、どういうわけか周りの大人に抑圧され続けていた。
好きな色を上げれば、担任の教師に「それは泥棒の色だ」と言われ、
好きなことをすれば、下らないといわれ、
そんなことを挙げればきりがない。
なぜ、あんなに抑圧され続けたのだろう。
いくら少し変わったところがあったにしても、おかしいほどだ。
しかも、一人の大人からではなく、周囲の大人たちの大半から、行動や思想を抑圧されてきた。
思い出すだに、不思議でならない。
もし、人生が全て自分の選択によるものであるとしたら、
私はこの期間を持って基盤とする人生で
一体、何を表現する人間になりたかったのだろう。
 
私がこの映画で受け取った「開け」というメッセージから、
もうその抑圧の期間は終わったのだ、ということも感じる。
これからは何かが形になっていくのかもしれない。
 
 
映画は最近よく観るようになって、月に10本ぐらいのときもあるが、いいものというのに当たるのはなかなか難しい。
なぜかと言うと、自分の方にその映画を受け入れる扉が既にできていなければ、
どんなに素晴らしいメッセージであっても受け取ることができないからだ。
扉ができていれば、それが閉まっていたとしても受け取ることができる。
例えば、不快さを感じる。
それを無視してしまったらそこで終わりであるが、
その不快さが自分の扉をノックしているのだと気付けば、
自ら扉を開けて、受け取ることができる。
なにかを。
 
まあ、どうしようもなく面白くない映画もあるが、
それは、やはり、多くの人の扉をくぐるメッセージがないというだけのことだろう。
きっと、駄作といわれる映画であっても、映画になるまでのエネルギーが注がれているのだから、
誰かの扉を強く叩いたり、新しい何かを見つけ出す客人となったりしているのだ、
この世界の中で。
そう思う。
 
それにしても、この叩くという行為、今の私には異様に気持ちがよい。
アルバムを2枚も注文してしまいました。
これからが楽しみです。