無の先に1

この前、ものすごく欲しいブーツが、欲しいけどお金がなくて買えなかった。
ずーっと、そのことを考えていた。
欲しいのに、買えない。
すごく惨めな気分になってきた。
なんでこんな惨めな気分になるんだろう?
もう、こんなことでこんなに低い気持ちになることはなくなってきていたのに。
 
その惨めさを追っていくと、
なにもない
という言葉に行き着いた。
なにもない
なにもない
 
成長した、
なにもない
幸せになった、
なにもない
悲しい、
なにもない
惨めだ、
なにもない
お金がない、
なにもない
後退した、
なにもない
なにもない
なにもない
 
始めから、なにもない
終わっても、なにもない
何かを得ても、なにもない
何も得ていない
何かを失っても、なにもない
何も失うことはない
本当は、なにもない
 
軽く背中を、とん、と押されて
ないもない
何もないところへ、すっと入りこみ
静かに扉が閉じられ、何もない場所へ、そして扉も消える。
 
この何もない場所は、初めからここで、私はいつもそこにいた。
良いことも、悪いことも、なにもなく、なにもないというほどに、すべてが存在している。
みっしりとした密度で、空間にすべてが満たされていて、「なにもない」状態を完璧にしている。
 
なんだろう、これは。
この闇のような、闇さえもないような、これは。
どうしよう、何の意味もない。すべてが。
生きていることも、生きていくことも、死ぬことも、意味がない。