フジツボ

昨日の、青の王女のつづき。
洞窟の中で、青いワンピースを着て、「大丈夫(かも)」と思って突っ立っている私。
ああ、さびしいなぁ、でもさびしいのはもう終わりにしたいよ、というかんじ。
でも、さびしいなぁ、さびしいんだよー、という気持ちをもう受け入れられるようになったなぁ、
とちょっとうれしいかんじもあり。
 
突っ立っていると、人がやってきた。
「ぼくといっしょに、ここを出ない?」といわれる。
オープナーちゃんだ。
差し出された手に、自分の手を反射的に出すと、手が、絵の具のように真っ青である。
オープナーちゃんに促されて、「ゲッ、自分の力で出なかったら、どうなるの?」と急に怖くなり、
私は周りをきょろきょろ見回した。
そのとき、「そうそう、ジェニファーは?」と思ったら、
ムスッとした顔で彼女が立っていて、私に向って
「バカもの!」
と言い放った。
「バカもの!そうやって変わるチャンスをまた逃すのか、バカもの!」
ひー、天使のくせに口が悪いぞアバンダンスエンジェル!と思うが、びびる私。
「バカもの!」と何度も言われる。
「いいから、この洞窟から出てみなさい!外からどうなっているか見なさい」
と、猛烈に怒られる。
恐る恐る、光が差し込む穴から、外に出る。よじ登ったのか、どうなのか。
外からその洞窟を見ると、まるでフジツボのような容器だ。
中にいるときは、人知の及ばぬ深い森の奥の洞窟だと思っていたが、巨大なフジツボだ。
私は中をのぞいて、「・・・フジツボです」とジェニファーに言った。
中がとてもよくできている洞窟になっているが、外から見るとフジツボだ。
そうであろう、とでも言うように、ジェニファーはうんうん、と頷く。
フジツボは、私が手をかけている淵を起点にして、ぐんぐん縮んでいく。
そして、1cmぐらいの、灰色のフジツボになってしまった。
「そんな小さな物の中に閉じこもっていたら、あなたまで小さな人になってしまいます」
と、たしなめられる。
「小さな人のままでいいなどというのは、幼稚な考えです。
自らの大きさをさっさと受け入れて、本来の力をきちんと発揮し、還元しなさい。
その小さなものに押し込めていたものがどれだけ大きいのか、早いところ認識して、
そんな自傷行為のようなエゴのなかに浸って安全でいようなどという考えは捨てなさい。
第一、本当に安全であるということは、そんなくだらない状態ではありません」
とジェニファー。
フジツボを手のひらに載せて、言われるままにぼけーっとしている私。
なんで、こういう色々言うやつはロンロンのときといい、口が悪いんだろうか、とふと思う。
「あなたには大きく見えた時もあったかもしれないが、ソレ(フジツボ)はあなたの中にあるものです。
小さくて当然です。そしてそれば全体ではなく部分であることを受け入れなさい」と言われた。
そして、もう3mmぐらいしかないフジツボを飲み込んだ。
飲み込むと、体がどんどん青くなっていった。
「ほら、まだ『私はさびしい生き物だ』というような自己憐憫がある!さっさとそんな服は脱ぎなさい」
と言われ、まるでオバQのように青い服(体の皮?)を脱いだ。
脱いだすぐのときは白いのだが、すぐにだんだん水色から青に変わっていく。
「ほら、どんどん脱ぐ!脱いでしまいなさい!!」
と言われて、どんどん脱いでいく。脱いだものは、ジェニファーに渡していく。
だんだん、色が薄い水色みたいになっていく。
フジツボは、よくかんで食べましたか?飲み込んだだけでは駄目です。消化してしまいなさい」
と言われて、じょりじょり、ぼりぼり噛む(飲み込んだはずだがw)。
すると、ワンピースが水色から、薄い藤色に変わっていった。
それをみて、「まあ、いいでしょう。あとは徐々に受け入れたらいいのです」といった。
本当に世話が焼けるなぁ、という感じで沢山の青い服を抱えている。
ジェニファーは空いた片手の方で物凄く眩しい光のような炎を作り出し、服に点火した。
点火すると、わずかな煙を作りながら、青い服はエメラルドグリーンと青、黄色に輝いて燃えていった。
「これを形作っていたエネルギーを、ニュートラルなエネルギーそのもの(光?)に変えて、宇宙に戻します。
あなたを含めた必要な人が、必要なだけ使える本来の力そのものに戻します」
と言って、腕を振ると、宇宙なのか暗闇の中に、金色の光がバァーッと拡散していった。
あー、あんなにすごい量のものを抱えていたのかぁ、と思った。
でも、私の左手の指先が、ちょっと青い。
「それは、誰かに握ってもらったらいいんです」
と、ジェニファーは私にウインクした。
 
そういえば、青の王女はどうなったのだろうと思った。
すると、私の前に、オリーブブラウンの髪の女の子が立っている。
おお、髪の色変わってるじゃん。しかも、髪の長さも今は肩甲骨ぐらいまでになっている。
生成りの木綿のワンピースを着ている。
両手を拡げて、私に「だっこ!」という仕草をするので、抱っこしてやる。
両足で私をはさんで、右肩に頭をぴっちりくっつけて、幸せそうだ。
おー、よしよし、と思い、背中をなでてやると私も幸せな気分だ。
が、左にジェニファーが立っている。
そして、私の左肩にポンと手をおいて、にっこりし、「統合を目指しなさい。それはあなたです」という。
「どんなに心地よいものであっても、荷物であれば重いのです。それを下ろし、身軽になりなさい」
青の王女をソレ呼ばわりのジェニファー。
スパルタ系ですか、おねえさんは・・・。
「私は妥協を許しません」と、笑顔ではっきり言われた。
「これこそが使命であり私であることです」だそうです。
もう青くなくなった青の王女(ややこしい。ただの子供みたいだが)を見ると、不満そうにジェニファーを見て、
「だって、私がいつまでもいれば、何かあったとき私のせいにできるもん」
という。
・・・・うわわわ、これは、いやだ!と思った/汗。
統合したいです、と思うと、「本当に?」と怪訝な顔で青の王女に言われる。がっちり抱っこしたままだ。
「寂しいと思うことも許すし、誰かに助けを求めることももう、言い訳なしにちゃんと自分に許したい」
と青の王女に言うと、肩に頭を乗せて、目を閉じ、ゆっくりと呼吸を始めた。
そして、小さな声で「もう大丈夫、大丈夫」と私に言い聞かせた。
「私がいなくても、一人じゃないから大丈夫」と言う。
言いながら、青の王女はだんだんと薄くなっていく。
青の王女の背中をなでる。暖かい、と思う。
ジェニファーも、少し悲しい顔で、青の王女の肩をなでている。
「寂しいとは、こういうことです」
と、ジェニファーに言われる。
青の王女は、眠りにつきながら、徐々に私の中に溶けてゆくのだろう、と感じた。
そして、私たちの境界はなく、離れることはなくなるのだ。
これが、統合の形だ。
「そう、一つずつです」
と言われた。
 
 
これでおわりかな、と思ったが、最近レキエルいないじゃん、どうした?
と、思い出すと、
後頭部あたりにイメージがわき、「今は、ジェニファーの方がいいでしょう」
と笑顔で言って、そのまま消えた。
うーん。
しばらくスパルタお姉さんのお世話になるか・・・。
アバンダンスプログラムとごっちゃになって、ちょうどいいのかもしれない。